外部講師をお招きして 我孫子市白樺文学館長 辻 史郎先生の講義

7月1日(月)、本学科の1年生必修科目「家庭経営学」では、我孫子市白樺文学館長の辻史郎先生による「女性と家事労働~女中を巡って」の講義がありました。

 

奇しくも7月1日は富士山の山開きの日にあたり、6月30日の「夏越の祓い」を経て、「茅の輪くぐり」などして罪、穢れから心身を清め、これからの夏を元気に過ごそうとする、夏の始まりの日である、ということ、また、夏至から11日目にあたる今年の7月1日は雑節のひとつである半夏生(はんげしょう)であり、タコを食べて元気をつける、という食文化の話をしてくださいました。? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 栄養士、家庭科教諭を目指す学生たちにとって、文化を知ること、食べること、について考えさせられる内容から講義は始まりました。

??労働者としての女中の誕生は、江戸時代にさかのぼりますが、明治期以降、江戸時代までの厳しい身分制度が解体し社会が変化したことにより役割が増えたといいます。特に中産階級以上の家庭において、「男は社会に、女は家庭に」という良妻賢母としての女性像が求められたことから、いわゆる「奥様」の役割が増え、複雑化していく中で、奥様のサポート役として女中がクローズアップされるようになったということでした。

女中の社会的地位は低かったが、各家庭では、若い女性が家族と一緒に住んでいるわけなので、家族に波乱を呼ぶ存在として、また、恋愛対象の異性として、その家族に意識されていたことも多くあったようです。

辻先生の講義を聴きながら、家庭の仕事を担う女中という「労働者」ではなく、同居家族の中で意識されつつ、また、家族に気を遣いながら、一緒に暮らしている「生活する人間」「生活者」としての女性たちの姿が見えてくるようでした。

講義後のディスカッションでは、これから家庭の仕事を誰が担っていくのか、について意見交換をしました。? ? ? 現代では共働きがデフォルトなのに、依然として家庭の仕事は妻や母親たちが主として行っている現状にあります。家事ロボットが開発されるとよいね、という意見もだされました。

授業を終えての学生の感想をいくつか紹介します。

 

昔の日本は、みんながみんなそうじゃなかっただろうけど朝から晩まで働き続けてすごいなと思った。これは今の時代で食べ物や知識が溢れかえったからこそ、働き方改革やジェンダーレスとして改善している。江戸時代では、エコや限られたご飯を食べて、働き方や生き方に疑問を持つことなく生きてきたのかな、持ったとしてもそう生きるしかなかった?と思った。(I)

 

江戸時代や明治時代に比べて時代の流れが進む中、女性の働き方が大きく変化して家事に対する意識が現在は薄れてきていると感じました。特に,昔は女中の労働時間が長く、家事が多い印象を受けて自由な時間がほぼとれない状態だったことが印象に残っています。また、作家との恋愛では、身分の格差が当時には根強く残っていて少し切ない気持ちになりました。本日の講義は女子大学の基本となる教養を学べる貴重な時間でもあり、昔からの伝統や教えは今も大切にもつべきだと私は思いました。本学の学びもそのひとつであり講義を受けてさらに好きになりました。(I)

 

今日の講義では、江戸時代から明治時代以降の女中の仕事内容や、家庭のあり方を知ることができた。女中は、今の仕事と比にならないくらいの仕事量であることが分かった。また、今の時代のお菓子の名前や記念日カレンダーの名前は昔の時代と関わりをもっていることが分かった。栄養士を目標に授業を学び、研究しているが、今日は何の日だろうと興味を持ち、昔の時代と関連付けて生活していきたい。(T)

 

これだけ男女格差が明確であると、現代にも強く根付いているのも納得である。共働きがデフォルトの現代でも女性が家事を多く担っているのは、「女は家庭」の論理が今でも前面に押し出されているからだと感じた。(H)

 

辻先生、楽しい講義をありがとうございました。